「ACE COMBAT 7: SKIES UNKNOWN」と「TOP GUN: Maverick」に学ぶ、ユーザーファーストなコラボレーション手法

この記事は、クリエイティブコミュニティDISTが主催するイベント「ゲームから学ぶUI/UX Ⅴ Revenge」で、発表した内容になります。

よいUI/UXを追求してきた先駆者であるゲームから学ぶため、各スピーカーが特に優れていると考えるゲームタイトルを持ち寄り、そのよさを語り合います。メディアを横断した体験を通して、Webの向上に繋げましょう。

DIST.36 「ゲームから学ぶUI/UX Ⅴ Revenge」

はじめに

最初に、今からお話しすることは、著者が特定のゲームをプレイして、1ゲームユーザーとして個人的に感じたことであり、著者の所属や肩書きとは一切関係はありません。

我が家の秘密のゲーム部屋です

さて、ゲームというジャンルに限りませんが、エンタメ系のコンテンツでは、異なる立場、異なる商標などを用いた共同成果物(コラボレーション)がしばしば作り出されることがあります。

このセッションでは、「ACE COMBAT 7: SKIES UNKNOWN (以下ACE COMBAT 7)」というゲームにおいて、映画「TOP GUN: Maverick」とコラボレーションしたコンテンツをプレイして感じた、Web制作にも通ずる学びをご紹介したいと思います。

「ACE COMBAT 7」について

まず、「ACE COMBAT 7」はどういうゲームかというと、

架空の国や都市を舞台に、プレイヤーはエースパイロットとして国家レベルの紛争・陰謀に巻き込まれながら、戦闘機を駆って過酷なミッションをこなしていくフライトシューティングゲームです。

ACE COMBAT™ 7: SKIES UNKNOWN & © Bandai Namco Entertainment Inc.

ACE COMBAT 7を含めたACE COMBATシリーズの特徴として、架空の世界を舞台にした物語でありながら、映画「TOP GUN」にも登場するF-14のような、現実世界に実在する戦闘機も登場するというパラレルワールド的な世界観になっています。

「TOP GUN: Maverick」について

続いて、映画「TOP GUN: Maverick」について、今年世界中で大ヒットした記憶も新しいので、多くの方がご存じなのではないかと思うのですが、ざっと概要をお伝えすると、

「TOP GUN: Maverick」は、アメリカ海軍パイロットの技術を引き上げるための養成機関、通称「TOP GUN」を舞台にして、若きエースパイロットたちの友情と成長を描いた1986年公開の映画「TOP GUN」の36年ぶりの続編です。

©2022 Paramount Pictures Corporation. All rights reserved.

元TOP GUNエースパイロットのマーヴェリックは、TOP GUN卒業生から選りすぐられた若きパイロット達に訓練を施す教官として、とあるならず者国家が建設しようとしているウラン濃縮プラントを破壊するための特殊作戦に挑む、というストーリーになっています。

©2022 Paramount Pictures Corporation. All rights reserved.

前作「TOP GUN」の印象

さて、ここで36年前の前作となる映画「TOP GUN」に対する個人的な印象ですが、こんな感じです。

前作「TOP GUN」の印象

空母からF-14 Tomcatが発艦するシーンにDanger Zoneが流れたら、もう7割くらいはTOP GUNだと思っています(※ 個人の感想です)。
それくらい当時の自分にとって、F-14とDanger Zoneの格好良さが強烈に印象に残っている映画です。

「TOP GUN: Maverick」の印象

そして、今年「TOP GUN: Maverick」を劇場で見たときの印象は、こんな感じでした。

「TOP GUN: Maverick」の印象

前作の主役機体であるF-14は、2000年代に全機退役しているため、今作ではたしてTOP GUNらしさはあるのかと一抹の不安もあったのですが、Top Gun Anthemのあの「ゴーン…」という鐘の音でタイトルコールが始まり、朝焼けのオレンジをバックに空母から戦闘機が発艦してDanger Zoneが流れ出すという、まさかの前作完コピオープニングで、開始3分で「あ、これはTOP GUNだ」と認識しました。

さらに、前作では領空侵犯した敵機に対するスクランブルという突発的なドッグファイトでしたが、今作では目的があって超絶難易度ミッションに挑むということもあり、入念なブリーフィングから実戦へと進行する流れに「Ace Combat」味を感じつつ、実際の戦闘機を使ったリアルな飛行シーンは、映画というエンタテインメントの可能性を再認識させてくれました。

TOP GUN: Maverick Aircraft Set

そして、それを踏まえた上で、映画公開後に発表されたAce Combat 7における「TOP GUN: Maverick」コラボコンテンツがこちらです。

プレイアブル機体

  • F/A-18E Super Hornet | Top Gun: Maverick
  • F-14A Tomcat | Top Gun: Maverick
  • 5th Gen Fighter | Top Gun: Maverick
  • Dark Star
  • F-14A Tomcat
  • F/A-18E Super Hornet

エンブレム

キャラクターイメージエンブレム
“MAVERICK”, “HANGMAN”, “PAYBACK”, “ROOSTER”, “BOB”などを含む全10種。

コラボレーション通り名

TOP GUN: Maverick Aircraft Setを獲得した証の通り名“Goose”や“Cougar”など全12種。

マルチプレイ用BGM

  • 「Danger Zone」(小林啓樹アレンジver.)  
  • 「Top Gun Anthem」(小林啓樹アレンジver.)

内容詳細

メインとなるプレイアブル機体としては、「TOP GUN: Maverick」での主力機体F/A-18E Super Hornetはもちろん、主人公補正(?)で性能強化されたF/A-18E Super Hornetのマーヴェリック専用機、

F/A-18E Super Hornet | TGM

そして前作の主役機体であるF-14A Tomcatの「TOP GUN: Maverick」仕様の機体。

F-14A Tomcat | TGM

実はこのコラボコンテンツがなくても、Ace Combat 7 本編でもF-14D Super Tomcatという機体を入手することができるのですが、現実世界ではすでに退役済みの古い機体ということもあり、性能はそれほど高くありません。

このコラボコンテンツに含まれるF-14A Tomcatの「TOP GUN: Maverick」仕様は、エースパイロットに相応しい機体として、速度性能や機動性を向上させ、より空戦性能に特化した機体性能で、劇中のマーヴェリックになりきりつつ、最新の戦闘機とも渡り合える機体になっているのが、まさに「わかってるね!」という感じです。

また、映画における敵側の機体である5th Gen Fighter(第5世代戦闘機)、映画オリジナルの架空の極超音速機Dark Starが含まれます。

5th Gen Fighter、Dark Star

映画オリジナルの機体であるDark Starは、ただ版権元から提供された資料を元に見た目を再現するだけではなく、「最新鋭の機体なので近未来的なパルスレーザーを搭載しよう」など、開発チームとアイデアを膨らませながら制作されたそうです。

そして、TOP GUNといえば映像体験と同じく記憶に残るサウンドトラックですが、その中でも特に印象の深いDanger ZoneとTop Gun Anthemのアレンジバージョンがマルチプレイ用BGMとして収録されているのが新旧TOP GUNファンには嬉しいところです。

マルチプレイ用BGM

満足度の高いコラボレーションとは

通常AというコンテンツとBというコンテンツがある場合、共通する部分が多いほど、どちらのユーザーにとっても満足度の高いコラボレーション効果が期待できると思われます。

満足度の高いコラボレーション

逆に、それぞれのターゲット層を無視して、コンテンツの良さを相殺してしまう、いわゆる「誰得」コラボレーションも世の中には少なからず存在してきたので、ただ組み合わせれば良い、というわけではないことに注意が必要です。

「誰得」コラボレーション?

「TOP GUN: Maverick」コラボコンテンツでは、「Ace Combat 7」と「TOP GUN: Maverick」、それぞれのファンからも総じて満足度の高いものになっているのではないかと思います。

「Ace Combat 7」×「TOP GUN: Maverick」の場合

「TOPGUN: Maverick」コラボコンテンツに物申す

しかし、一点だけどうしてもこのコラボコンテンツに物申したいことがあります。
それは、マルチプレイ用BGMとして収録されている、Danger ZoneとTop Gun Anthemのアレンジバージョンの再生条件についてです。

公式サイトによると、

「Danger Zone」(小林啓樹アレンジver.)
※マルチプレイモード開始時に本DLC対象機体を使用したプレイヤーがいた場合、ランダムで選曲されます。

「Top Gun Anthem」(小林啓樹アレンジver.)
※本DLC対象機体を使用して、MVPを獲得した場合、選曲されます。

Ace Combat 7 公式サイト DLC情報

と記述されています。
つまり、「Danger Zone」のランダムで選曲はまだしも、「Top Gun Anthem」に至っては、マルチプレイでDLC対象機体のプレイヤーがMVP、つまり最もスコアの高かった場合のみ聴くことができるというものになっています。

自慢ではないですが、僕はゲーム歴でいうと30年以上、ゲームが好き過ぎてゲーム会社でデザイナーをやっているくらいの人間ですが、ゲームが好きなのとゲームが上手いのは別の問題だと思っています。
何が言いたいかというと、このゲームをもっとも低い難易度でようやくクリアした自分のような場合、自分の購入したこのコラボコンテンツに含まれる「Top Gun Anthem」(アレンジver.)を、自力では聴ける気がしない、ということです。

したがって、さきほどの共通部分でいうと、新たな条件「ゲームが上手い人」が追加されて、すべての条件に当てはまる(コラボコンテンツを全部楽しめる)人を減らしてしまっているように思えます。

これは、昨今重要視されるようになっている「ゲームアクセシビリティ」、障害やゲームの上手さに関係なく、すべてのユーザーがゲームを楽しめる仕組み、にも通じることですが、できればいつでもTOP GUN気分に浸りたいので、是非ここは改善を希望したいところです。

Web制作におけるコラボレーション

ここまでゲームにおけるコラボレーションについてご紹介しましたが、Web制作の現場においても、様々な立場や役割があり、

  • ディレクター
  • デザイナー
  • エンジニア
  • デザインツールやフレームワーク
  • etc…

様々な組み合わせのコラボレーションが存在します。
個人的な相性などもあるのかもしれませんが、各自の専門領域(プロの仕事)を遂行するのは大前提として、ただ自分の好みでコンセプトや、デザイン、各種ツールを組み合わせるのではなく、ユーザーの経験値や操作・閲覧環境に依存せず、すべてのユーザーが正しく情報を取得できるかを考える必要があります。

結局のところ、コラボレーションを必ず成功させるための銀の弾丸なんてものは存在せず、どんなスーパーデザイナー、凄腕エンジニア、優れたツールとコラボしたとしても、本当にわかりやすいのか?使いやすいのか?
ユーザー視点での地道な検証こそ大事、という基本的なところを意識して、適切に情報共有しながらコラボレーションしてみると良いのではないかな、と思います。

最後に

最後に、今回ご紹介した「TOP GUN: Maverick」コラボコンテンツがどのように生まれたのか、制作チームの方へのインタビューが記事化されていますので、こちらもご覧いただくと、よりコラボレーションを楽しめるのではないかと思います。

個人的なおすすめの流れは、

  1. 前作「TOP GUN」を観る
  2. 「Ace Combat 7」をプレイする
  3. 「TOP GUN: Maverick」を観る
  4. 「TOP GUN: Maverick」コラボコンテンツを楽しむ
  5. 3〜4をn回繰り返す

です!

おしまい。